ゴミ屋敷問題は人と犬を同時に救う視点が不可欠
ゴミ屋敷での犬の多頭飼育崩壊。この問題に対応する際、私たちは二つの側面から物事を捉える必要があります。それは「動物の保護」という側面と、「飼い主の福祉」という側面です。しばしば、メディアでは不衛生な環境で苦しむ犬たちの姿が強調され、飼い主は一方的な加害者として描かれがちです。しかし、現場で対応する専門家たちは、問題がそれほど単純ではないことを知っています。多くの場合、飼い主自身が精神的な疾患や知的障害、あるいは深刻な社会的孤立といった課題を抱えています。彼らは助けの求め方を知らず、歪んだ形で動物への愛情を表現することで、かろうじて心のバランスを保っているケースも少なくありません。このような状況で、ただ犬だけを強制的に保護しても、根本的な解決には至りません。残された飼い主はさらに孤立を深め、また同じことを繰り返してしまう可能性が高いのです。真の解決のためには、動物愛護の担当部署と、高齢者や障害者を支援する福祉の担当部署が緊密に連携する「ワンウェルフェア」の視点が不可欠です。つまり、動物(アニマルウェルフェア)と人(ヒューマンウェルフェア)の福祉は一体であり、両方を同時に救うアプローチが求められるのです。犬を安全な環境へ移すのと並行して、飼い主には精神的なケアや生活支援、医療へのアクセスなどを提供する。人と動物、双方の専門家がチームを組んで介入することで初めて、悲劇の連鎖を断ち切ることができるのです。