ゴミ屋敷から来た保護犬が心を開いてくれた日
我が家に「ソラ」がやって来たのは、半年前のことです。ソラは、いわゆるゴミ屋敷と呼ばれる多頭飼育崩壊の現場からレスキューされた保護犬でした。初めて会った時のソラは、ケージの隅で小さく丸まり、人間と決して目を合わせようとしませんでした。体は痩せこけ、毛は伸び放題。何かにひどく怯え、小さな物音にもビクッと体を震わせるのです。家に連れて帰ってからも、ソラの恐怖は続きました。広いリビングに出ることを怖がり、トイレの隅が彼の唯一の安心できる場所でした。ご飯も、私たちが寝静まった後でなければ口をつけません。撫でようと手を伸ばせば、唸り声をあげて後ずさりしました。彼の過去に何があったのかを思うと、胸が締め付けられるようでした。私たちは、ソラのペースに合わせることを徹底しました。無理に触ろうとせず、ただ静かに同じ空間にいること。優しい声で名前を呼び続けること。おやつをそっと床に置いて、離れた場所から見守ること。そんな毎日が、一ヶ月、二ヶ月と過ぎていきました。変化は、本当に少しずつでした。ある夜、私がソファでうたた寝をしていると、膝にそっと重みを感じました。目を開けると、ソラが私の膝に顎を乗せ、じっとこちらを見ていたのです。それは、彼が初めて自ら私に近づいてきてくれた瞬間でした。涙がこぼれそうになるのを必死でこらえ、私はただ「ソラ、ありがとう」とだけ囁きました。ゴミ屋敷での過酷な日々が彼の心に残した傷は、まだ完全には癒えていないかもしれません。しかし、あの日、私たちは確かに家族になったのだと確信しています。