私が動物保護ボランティアとして活動を始めて数年、忘れられない現場があります。近隣住民から「犬の鳴き声が昼夜問わず聞こえ、ひどい臭いがする」という通報を受け、行政の担当者と共に訪れた一軒家。それが、私が初めて目の当たりにしたゴミ屋敷でした。玄関のドアが開いた瞬間、鼻を突き刺すようなアンモニア臭と腐敗臭が流れ出し、思わず息を止めました。家の中は足の踏み場もなく、ゴミの山の間から、怯えた目をした数匹の小型犬がこちらを見ていました。飼い主の高齢女性は「この子たちは私の子ども。大丈夫」と繰り返すばかりで、話が噛み合いません。床は排泄物で汚れ、犬たちの毛は汚れと糞尿で固まっていました。私たちは慎重に言葉を選びながら、犬たちの健康状態を確認させてほしいと根気強く説得を続けました。数時間にわたる対話の末、ようやく女性は専門家による一時的な保護に同意してくれたのです。一匹ずつキャリーケースに移す作業は困難を極めました。人間に慣れていない犬たちは、隅で震えたり、恐怖から歯を剥いたりしました。その瞳には、救助される安堵ではなく、未知への恐怖が映っていました。全ての犬を運び出し、車に乗せた時、安堵と共に深い悲しみがこみ上げてきました。これは飼い主の愛情が歪んだ形で表出してしまった悲劇なのだと。あの日救い出した犬たちが、新しい家族のもとで安心した表情を見せるようになるまで、長い時間が必要でした。あの現場の臭いと、犬たちの怯えた瞳を、私は生涯忘れることはないでしょう。