ゴミ屋敷の片付けにかかる時間を考える時、私たちはつい、ゴミを袋詰めして運び出すという物理的な作業時間だけをイメージしがちです。しかし、実際には、その前後に発生する「隠れたタイムロス」が、全体のスケジュールを大きく左右することを忘れてはなりません。まず、片付けを始める前の「準備段階」に多くの時間がかかります。自力でやる場合、大量のゴミ袋、マスク、手袋、掃除道具などを買い揃える必要があります。どのサイズの袋が何枚必要かを見積もるだけでも一苦労です。また、自治体のゴミ分別のルールや、粗大ゴミの処分方法を事前に徹底的に調べなければ、せっかく分別したゴミが収集してもらえないという事態になりかねません。この情報収集と準備だけで、数時間、場合によっては数日を要することもあります。プロに依頼する場合でも、業者探しに時間がかかります。複数の業者を比較検討し、見積もりを取るための日程調整、そして契約に至るまで、少なくとも数日から一週間程度は見ておく必要があるでしょう。そして、物理的な片付けが終わった後の「清掃・原状回復段階」にも、予想以上の時間が潜んでいます。ゴミがなくなった床や壁には、長年の汚れやシミがこびりついています。カビや害虫が発生していることも珍しくありません。これらの特殊な清掃や駆除作業は、通常の掃除とは比べ物にならないほど手間がかかります。また、部屋に染み付いた強烈な臭いを取り除くための消臭作業には、専門的な機材や薬剤が必要となり、数時間から数日を要することもあります。このように、ゴミ屋敷の片付けは、目に見える作業以外にも多くの時間を必要とします。これらの隠れたタイムロスをあらかじめ考慮に入れておくことが、現実的な計画を立てる上で非常に重要です。