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ゴミ屋敷になぜコバエが湧くのかその理由
ゴミ屋敷と聞いて多くの人が連想する不快な光景の一つに、無数に飛び交うコバエの群れがあります。なぜ、ゴミが溜まった家ではあれほどまでにコバエが大量発生してしまうのでしょうか。その理由は、コバエの生態にあります。一般的にコバエと呼ばれる虫にはいくつかの種類がありますが、ゴミ屋敷で特に問題となるのは、腐った果物や生ゴミを好むショウジョウバエや、より腐敗が進んだヘドロ状のゴミを発生源とするノミバエなどです。彼女たちは、わずかな食べ物の匂いを嗅ぎつけ、屋外から侵入してきます。そして、ゴミ屋敷は彼女たちにとってまさに理想的な繁殖環境なのです。放置された食べ残し、こぼれたジュースのシミ、キッチンの三角コーナーに溜まった生ゴミなどは、コバエが産卵するための絶好の場所となります。一度産卵されると、気温にもよりますが、わずか10日ほどで成虫になり、その成虫がまた卵を産むという爆発的なサイクルが始まります。ゴミの山に隠された発生源は無数に存在するため、市販の殺虫剤をいくら撒いても、その場しのぎにしかなりません。コバエの大量発生は、単に不快なだけでなく、その家が生命の繁殖を許すほどに腐敗と汚染が進行している危険なサインなのです。ゴミ屋敷に群がるコバエは、ただ「うっとうしい」だけの存在ではありません。その小さな体は、私たちの健康を脅かす深刻な危険を運んでいる可能性があるのです。コバエは、腐敗した生ゴミや動物の排泄物など、極めて不衛生な場所を発生源とし、そこを飛び回って栄養を摂取します。その過程で、彼らの脚や体には、大腸菌やサルモネラ菌といった食中毒の原因となる病原菌が付着します。そして、その体で室内を飛び回り、人間の食べ物や食器、調理器具の上にとまることで、病原菌を広範囲に撒き散らしてしまうのです。免疫力が正常な大人であれば、すぐに重篤な症状に至らないかもしれません。しかし、ゴミ屋敷の住人が高齢者や何らかの疾患を抱えている場合、そのリスクは格段に高まります。抵抗力が低下している体にとって、コバエが媒介する細菌は、肺炎や重い消化器感染症の引き金となり得ます。また、コバエの死骸やフンはアレルギーの原因となるアレルゲンとなり、喘息やアトピー性皮膚炎を悪化させることも指摘されています。